説明が伝わらない原因は、言葉選びではない。
『具体と抽象』を通じて思考を上下に行き来させるようになり、
判断も説明も一気に通るようになった。
本記事では、具体と抽象をどう使い分けたかを整理する。
※ 本記事をお読みになる前に(必ずお読みください)
本ブログは、いわゆる
書評・要約・解説・読書感想文を目的としたものではありません。
本ブログのテーマは一貫して 「メタ視点」 です。
書籍や経験といった具体的な情報を一度「使った上で」、
思考・判断・行動がどのように変化したかを起点に、
再利用可能な形で抽出した実践知(フロネーシス)を記録しています。
そのため本ブログでは、
具体 → 抽象 → 抽出(再利用)
という思考レイヤーの移動を前提としています。
書籍そのものの理解や要約を目的とする場合とは
アプローチが異なる点を、あらかじめご了承ください。
2-7-1|この本から抽出した、たった一つの技術

『具体と抽象』を読んで、私が抽出したのは知識ではありません。 手に入れたのは、思考の階層移動という技術でした。
掃除をして、という言葉は抽象です。 それを具体化すれば、どこを、どう拭いて、そのあと何を片付けるかになります。 逆に、お酒という言葉は抽象で、具体に下ろせばビール、ワイン、焼酎、日本酒になり、さらに銘柄まで降りていく。 つまり、具体は増え、抽象は束ねる。 この上下の行き来そのものが、具体と抽象なのだと理解しました。
2-7-2|掛け算の計算式で考えてみる

じぶん × 具体と抽象 = 思考の階層移動
人は一般に、具体の方が理解しやすいです。 けれど、具体は増え続ける。 一方で抽象は、全体を早く掴むのに向いている。 ただし、要約しすぎれば理解は落ちる。 だから大切なのは、どちらかを選ぶことではなく、どの階層で考え、どの階層で伝えるかです。
私にとってこの本は、抽象化の方法を学ぶ本というより、上下を移動しながら理解を合わせる本でした。 具体から抽象へ上がるのは難しい。 でも抽象から具体へ下ろせれば、伝わる可能性は上がる。 その移動感覚を意識できるようになったのは大きかったです。
2-7-3|私はその技術を、こう使った
この技術の必要性を強く感じたのは、通信業界で経営企画にいた頃です。 幹部に損益分岐点の話を説明する場面で、事業計画の数字だけでは伝わりにくいと思い、商売の話に置き換えて、1000円単位で固定費と変動費の説明をしたことがありました。
ところが、そこで返ってきたのは「なぜ通信なのに商売の話をしているのか、意味がわからない」という反応でした。 私は、抽象を理解してもらうために別の具体へ置き換えたつもりでした。 でも相手にとっては、その飛び方自体が大きすぎた。 つまり、わかりやすくしたつもりが、逆に階層のズレを広げてしまったのです。
この経験で痛感したのは、説明の正しさだけでは足りないということでした。 どのレイヤーなら伝わるのか。 どこまで下ろし、どこまで上げるのか。 そこがズレると、話は噛み合わず、説明する側の問題として処理されやすい。 上司と部下の会話でも、よく起こることだと思います。
2-7-4|使った結果、見える世界がどう変わったか
この本を使って見えるようになったのは、 わかりやすさとは、単純化ではなく階層合わせだということです。
具体化しすぎれば、かえって本題から離れる。 抽象化しすぎれば、今度は手触りが消える。 大切なのは、その中間を探すことではなく、相手が今どの階層で理解しているかを見極めることです。
今の私は、伝えるときにまずレイヤーを意識します。 この階層なら伝わるか。 この階層だと伝わらないか。 そして、その階層を見極めるために、問題に名前をつけることも意識しています。 名前がつくと、人はそのズレを認識しやすくなるからです。 ただし、人そのものをラベリングすると誤解を生むので、そこは分ける必要がある。 私にとって具体と抽象とは、説明技術ではなく、レイヤーを見極めて思考を移動させる技術でした。
2-7-5|次の技術へ
階層を移動できるようになると、次に必要になるのはその階層全体をどう組み替えるかです。 次は、『アーキテクト思考』を通して、構造による再配置を書きます。

