1-2|期待のバグ|合意のない未来を「予定」として扱ってしまう構造

期待という文字と、額に手を当てて考え込む男性のシルエットイラスト
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1-2-1|期待のバグとは(現象の輪郭)

約束がキャンセルされたメッセージを見て、繁華街の中で動揺し立ち尽くす人物のイラスト
期待のバグ ― 未来に置いた前提が崩れたとき、感情だけが先に暴走する状態

期待のバグ ― 未来に置いた前提が崩れたとき、感情だけが先に暴走する状態

「こうしてくれると思っていた」「そこまで悪い結果にはならないだろう」

友人との約束。上司の一言。恋人の「今度ね」。 その言葉を信じて、頭の中で未来を組み立てる。ワクワクする。準備もする。

──そして、ドタキャンのLINEが届く。

「え、ウソでしょ…」 「あんなにウキウキしてたのに…」 「期待が全部……ムダに…」

この瞬間に起きているのは、「約束が破られた」という事実よりも、「自分が勝手に組み立てた未来が崩壊した」という現象です。

期待のバグとは、合意のない未来予定として処理してしまう状態です。 ここでも割り算で、確かなものと不確かなものを分けます。

では、式から見ていきましょう。


1-2-2|期待のバグの状態を割り算の計算式で考えてみる

期待とは、予定ではありません。私たちが密かに相手へ求めてしまった「淡い見返り」です。

未来のワクワク ÷ 契約と合意 = 予定 …余り:淡い見返り

未来のワクワクを「契約と合意」で割ってみます。

たとえば「来週、飲みに行こう」という言葉があったとします。

これを「契約と合意」で割ると、何が残るか。 日時が決まっている。店が予約されている。双方が「行く」と明確に合意している──ここまで揃って初めて「予定」になります。

しかし実際には、「来週行こうよ」「いいね」程度のやり取りで、頭の中では「予定」として処理されている。日時も場所も曖昧なまま、ワクワクだけが先行する。

割り切れなかった部分──それが「淡い見返り」です。


1-2-3|期待のバグを割り算で割ったときに浮かびあがる「予定」について

割り算をすると、「予定」と呼べるものは意外と少ないことに気づきます。

人の言葉を鵜呑みにするのは危険です。 言った言わないは、その時のノリです。平気で覆ります。

関係が近ければ近いほど、言葉は適当になります。 「今度ご飯行こうね」は、挨拶に近い。 「来月には連絡するよ」は、その場を収めるための言葉かもしれない。

逆に、関係が遠ければ、そもそも責任を伴わない。 営業トークの「検討します」。社交辞令の「また誘ってください」。

極論を言えば、言葉の責任を担保するのは契約書しかありません。 しかし、人間関係に契約書を持ち込めば、コミュニケーションそのものが壊れる。

これが期待のバグの厄介なところです。 確かなものだけに絞ると関係が硬直し、曖昧さを許容すると期待が暴走する。

割り算で浮かび上がる「予定」は、双方の合意が確認できたものだけです。 それ以外は、予定ではなく「可能性」に過ぎません。


1-2-4|期待のバグを割り算して余りとして残るものについて

余りとして残る「淡い見返り」とは何か。

それは、期待の中に無意識に含まれている「こうしてほしい」という気持ちです。

「飲みに行こう」と言われてワクワクしているとき、そこには純粋な楽しみだけでなく、「自分との時間を大切にしてほしい」「約束を守ってほしい」「自分を優先してほしい」という見返りが混ざっている。

この見返りは、相手に伝えていない。合意もしていない。 自分の頭の中だけで発生した、一方的な期待です。

だからドタキャンされたとき、怒りや悲しみが爆発する。 「約束を破られた」のではなく、「自分が勝手に置いた見返りが回収できなかった」から苦しい。

淡い見返りは、消す必要はありません。 ただ、「これは自分が勝手に置いたものだ」と気づくだけで、怒りの温度は少し下がります。


1-2-5|期待のバグを少し距離を置いて観察してみる

期待のバグの本質は、他人は変数であるということです。

家族は比較的、定数に近い存在です。血縁という変えられない関係がある。 しかし、友人、同僚、恋人──これらはすべて変数です。 状況が変われば、関係も変わる。言葉も変わる。優先順位も変わる。

これは冷たい話ではありません。 自分自身も、誰かにとっては変数です。

みんな適当です。悪意があるのではなく、構造的にそうなっている。

だから、期待しないこと。 正確に言えば、話を半分にしておくこと

相手の言葉を信じるなという意味ではありません。 「合意が確認できるまでは可能性として扱う」──それだけです。

期待のバグは、脳が「未来のワクワク」を先に処理してしまう仕様から生まれます。 無意識であれば支配されます。 しかし、意識すれば防げます。

「これは予定か、それとも可能性か?」 その問いを一つ挟むだけで、期待の暴走は少し止まります。


1-2-6|人間の普遍的な悩みを他にも考えてみる【承認のバグ】

期待のバグは、人間の脳が持つ「バグ」の一つに過ぎません。

次の記事では「承認のバグ」を取り上げます。 他人の評価を自分の価値として扱ってしまう構造──「なんで俺は認められないんだ」、あの感情の正体です。

1-3|承認のバグ|他人の評価を自分の価値として扱ってしまう構造


1-2-7|その生きづらさ、構造につき。【全体を俯瞰する】

このシリーズ「その生きづらさ、構造につき。」では、全9つのバグを割り算で分解していきます。

すべてのバグに共通しているのは、無意識なら支配され、意識すれば防げるということ。

割り算は、悩みを消すための操作ではありません。 悩みを「確かなもの」と「不確かなもの」に分けるための操作です。

余りは消えなくていい。 ただ、それが余りだと知っているだけで、十分です。

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