1-3-1|承認のバグとは(現象の輪郭)

承認のバグ ― 評価を待つほど、基準が外にずれていく状態
「これならきっと、すごいと思われるはず」 「みんな私を見てくれないかな」 「声をかけてほしいなぁ」
ブランドを身にまとい、場にふさわしい自分を演出する。SNSに成果を投稿する。会議で目立つ発言をする。すべて「見てほしい」「認めてほしい」が動機になっている。
承認のバグのベクトルは内→外です。 自分の中にある価値を、外側に向けて提示し、他者からの反応を待っている。
問題は、反応が返ってこなかったとき。あるいは、期待した反応と違ったとき。 「自分には価値がないのか」という問いが発生します。
しかしこの問いは、最初から成り立っていません。 なぜなら、自分の価値を他人に測らせようとしている時点で、基準が自分の外にあるからです。
承認のバグとは、自分の価値の評価軸を他人に預けてしまう状態です。 割り算で、自分の軸と他人の軸を分けます。
では、式から見ていきましょう。
1-3-2|承認のバグの状態を割り算の計算式で考えてみる

自己価値 ÷ 自分の基準 = 自信 …余り:他人の評価
自己価値を「自分の基準」で割ると、「自信」が出ます。
ここが承認のバグの核心です。 多くの人は、自己価値を「他人の基準」で割ろうとしています。 上司の反応、同僚との比較、SNSのいいね数──それらを基準にしている。
しかし、他人の基準は自分ではコントロールできません。 コントロールできないもので割れば、答えは永遠に安定しない。
「自分の基準」で割るとはどういうことか。
自分は何を目指しているのか。どの場所で戦うのか。その目的に対して、今どこにいるのか。
メタルバンドが演歌の市場で評価を求めても、認められるはずがありません。ボクシングをやるのか空手をやるのか決めて、その階級の中で自分の位置を測る。それが「自分の基準」です。
自分の基準で割ったとき、初めて「自信」が浮かび上がります。
1-3-3|承認のバグを割り算で割ったときに浮かびあがる「自信」について
自信とは、他人に認められることではありません。 自分が自分の位置を把握していることです。
承認のバグに陥っている人は、自己肯定感が高いように見えることがあります。ポジションを取りに行く。マウントを取ろうとする。自分を大きく見せようとする。
しかし、その行動の裏には「認めてほしい」がある。 自分で自分を認められていないから、外側に承認を求めに行く。
自信は、外から調達するものではなく、内側で生成するものです。
昨日の自分と比べてどうか。先月の自分と比べてどうか。目指している場所に対して、どれだけ進んだか。
この問いを持っている人は、他人に承認を求める必要がありません。 自分の基準で、自分の成長が見えているからです。
1-3-4|承認のバグを割り算して余りとして残るものについて
余りとして残るのは「他人の評価」です。
他人の評価は消えません。誰かは褒め、誰かは無視し、誰かは批判する。それは環境として常に存在します。
しかし、ここで気づいてほしいことがあります。
そもそも、評価している側が正しいとも限らない。
上司の評価基準は、会社の都合で決まっています。パーティーで声をかけてくる人の基準は、その人の趣味や気分で決まっています。あなたの本質的な価値とは、何の関係もありません。
他人の評価を余りとして棚に上げる。 消す必要はない。ただ、「これは自分の基準ではない」と気づくだけで十分です。
承認のバグで最も致命的なのは、外側に承認を求めていること自体に気づいていないことです。見てほしい、認めてほしい、すごいと思われたい──その思考が回っている時点で、自分の評価軸が他人に預けられている。
それに気づいた瞬間、あなたはすでに一歩外側に立っています。
1-3-5|承認のバグを少し距離を置いて観察してみる
承認のバグの本質は、他人の人生を生きていることです。
他人にどう見られるかを考えている時間は、自分の人生を生きている時間ではありません。
自分の目的を見失い、他人の反応で自分の価値を測ろうとする。それは成長を止める要素にしかならない。
無意識であれば確実に支配されます。 しかし、意識すれば防げます。
「今、自分は誰の基準で動いているか?」
この問いを一つ挟むだけで、承認のバグは少し静かになります。
1-3-6|人間の普遍的な悩みを他にも考えてみる【嫉妬のバグ】
承認のバグは、自分を外に向けて提示する構造でした。 次の「嫉妬のバグ」は、矢印が逆になります。
他人の成果が、自分の満足度を壊しに来る。 承認のバグと似ているようで、ベクトルがまったく違う構造です。
→ 1-4|嫉妬のバグ|他人と比べることで満足度が壊れてしまう構造
1-3-7|その生きづらさ、構造につき。【全体を俯瞰する】
このシリーズ「その生きづらさ、構造につき。」では、全9つのバグを割り算で分解していきます。
すべてのバグに共通しているのは、無意識なら支配され、意識すれば防げるということ。
余りは消えなくていい。 ただ、それが余りだと知っているだけで、十分です。

