1-5-1|孤独のバグとは(現象の輪郭)

孤独のバグ ― ひとりでいることと、寂しいことを同じものとして処理してしまう状態
「休みなんだけどなぁ…」
予定のない休日。ソファに座って、ビールを開ける。テレビをつけるが、別に見たいものがあるわけでもない。SNSを開くと、誰かが友人と食事をしている写真が流れてくる。
別に寂しいわけじゃない。でも、なんとなくモヤモヤする。
孤独のバグとは、ひとりでいるという事実と寂しいという感情が、同じ場所で処理されてしまう状態です。
しかし、ひとりでいることと寂しいことは、本来別のものです。 割り算で、この二つを分けます。
では、式から見ていきましょう。
1-5-2|孤独のバグの状態を割り算の計算式で考えてみる

孤独感 ÷ ひとりの時間 = 長考 …余り:わずかばかりの寂しさ
孤独感を「ひとりの時間」で割ると、「長考」が出ます。
長考とは、深く考えること。将棋で言えば、一手に時間をかけて局面を読むことです。
ここで伝えたいのは、考えるという行為は、人といるとほぼ不可能だということです。
誰かと話しているとき、頭の中で起きていることは「考える」ではありません。相手の言葉に対して何を返そうか、気持ちに語彙を選んでいるだけです。限りなく感情的で、瞬間的な反応。いわゆるシステム1の動作です。
経験と言葉を持っている人なら、論理を組み立てることもできる。パズルを組むようにイメージを崩していく。しかし、これも厳密には「考える」ではありません。
誰もいない場所で、静かにシミュレーションをする。 自分の思考を一つずつ検証し、構造を組み替える。
それが「考える」という行為であり、「長考」です。 そしてそれは、ひとりの時間でしかできません。
1-5-3|孤独のバグを割り算で割ったときに浮かびあがる「長考」について
長考の時間は、贅沢です。
自己理解をするには孤独が必要です。自分が何を考えているのか、何を感じているのか、何を目指しているのか──これらを静かに掘り下げるには、他者の声が入らない空間が要る。
人といる時間は楽しい。しかし、それは他者との関係の中で生まれる時間であって、自分自身と向き合う時間ではありません。
長考は、ひとりの時間を「使う」ことで生まれます。 ただ漫然とひとりでいるのではなく、その時間を思考に充てる。
それができたとき、孤独は「耐えるもの」から「活かすもの」に変わります。
1-5-4|孤独のバグを割り算して余りとして残るものについて
余りとして残るのは「わずかばかりの寂しさ」です。
これは消えません。人間は社会的な生き物であり、他者とのつながりを求める仕様になっています。ひとりの時間がどれだけ充実していても、ふとした瞬間に寂しさが顔を出す。
しかし、この寂しさは「わずかばかり」です。 孤独感の大部分は長考に変換できる。残るのは、ほんの少しの寂しさだけ。
ここで重要なのは、孤独と孤立と孤絶は違うということです。
孤独は、自分でひとりを選ぶ贅沢です。能動的な選択。
孤立は、集団から除外された状態です。自分の意見がみんなと違うとき、「自分だけおかしいのか」と不安になる。10人中9人が同じ答えを出せば、たった一人の正しい答えすら揺らぐ。それが孤立です。
孤絶は、存在そのものが否定されている状態です。無視される。いないものとして扱われる。世界とのつながりが断たれている。子育て中に「社会とつながっていたい」と感じる心理は、この孤絶に近い感覚かもしれません。
この三つを区別すると、孤独が悪いものではないことが見えてきます。
寂しさが残ったとき、それは「孤独」の寂しさなのか、「孤立」の不安なのか、「孤絶」の恐怖なのか。割り算で分ければ、対処が変わります。
1-5-5|孤独のバグを少し距離を置いて観察してみる
孤独のバグの本質は、ここでも他人の人生を生きていることに行き着きます。
ひとりでいることが不安なのは、「みんなは誰かといるのに、自分だけひとりだ」という比較が動いているからです。
しかし、自分の顔を気にしているのは自分だけです。 あなたがひとりで過ごしていることを、他人はそこまで気にしていません。
ひとりの時間を「寂しい」と感じるか、「贅沢だ」と感じるかは、その時間をどう使うかで決まります。
無意識であれば、孤独は寂しさに変換されます。 しかし、意識すれば、孤独は長考に変換できます。
「今、自分はひとりだ。この時間で何を考えるか?」
この問いを一つ持つだけで、孤独のバグは少し静かになります。
1-5-6|人間の普遍的な悩みを他にも考えてみる【恋愛のバグ】
孤独のバグは、人間の脳が持つ「バグ」の一つに過ぎません。
次の記事では「恋愛のバグ」を取り上げます。 変わる感情を、変わらない前提として扱ってしまう構造──「ずっと好きでいてくれるはず」、あの思い込みの正体です。
→ 1-6|恋愛のバグ|変わる感情を、変わらない前提として扱ってしまう構造
1-5-7|その生きづらさ、構造につき。【全体を俯瞰する】
このシリーズ「その生きづらさ、構造につき。」では、全9つのバグを割り算で分解していきます。
すべてのバグに共通しているのは、無意識なら支配され、意識すれば防げるということ。
余りは消えなくていい。 ただ、それが余りだと知っているだけで、十分です。

