争う
誠の机の前に、真弓が立っている。
二人とも、まだ、何も言っていない。
争いは、勝ちたい人同士のあいだでは、起きない。
本気で勝ちたいなら、戦略を立てる。冷静に、相手の弱点を突く。感情を抑える。それが、勝つための、最短の道だ。
でも、人と人の争いは、たいてい、勝つための争いではない。
失いたくないものを、守るための争いだ。
失いたくないものは、人それぞれ違う。プライドだったり、関係だったり、自分の正しさだったり。失いたくないものを守ろうとして、人は、攻撃する。攻撃は、防衛の、別名だ。
だから、争いの場面で、人が言う言葉は、よく見ると、ほとんどが「自分を守るための言葉」だ。「相手を倒すための言葉」では、ない。
でも、守るための言葉が、結果として、相手を、深く、傷つける。
守りたかっただけなのに、傷つける。
傷つけられた相手も、自分を守るために、また、攻撃する。
こうして、双方が、自分を守るために、お互いを傷つけ合う。
これが、人と人の争いの、構造だ。
双方が、損をすると、分かっていても、止まらない。
なぜなら、止めることは、自分を守らないことを、意味するからだ。
真弓と誠は、十二月のある日の放課後、その構造の中に、二人で、足を踏み入れた。
踏み入れた瞬間、二人は、もう、戻れなかった。
戻れないことが、二人とも、分かっていた。
分かっていながら、止まらなかった。
止まらなかったから、二人の関係は、その日、決定的に、壊れた。
壊れたあとで、二人は、それぞれ、自分の中で、もう一度、その日のことを、再生し続けることになる。
再生しても、結果は、変わらなかった。
変わらないことが、ますます、痛かった。
第8話の「答えられない」のあと、二週間が、経っていた。
真弓は、その二週間、誠と、ほとんど話していなかった。
挨拶は、していた。すれ違うときに、軽く、頭を下げて。
でも、それ以上のことは、していなかった。
真弓は、自分で決めた距離を、守っていた。
守っていることが、楽だった。
守っていることが、悲しかった。
楽と悲しさは、矛盾しているはずだった。
でも、真弓の中で、それは、同時に、存在していた。
そして、ある放課後、真弓は、誠の教室に、行った。
行った理由を、真弓自身、よく分からなかった。
分からないまま、行った。
行った先で、何が起きるか、真弓は、予測していなかった。
予測していなかったから、起きたことに、対応できなかった。
誠は、自分の席で、ノートを広げていた。
真弓が、誠の席に、近づいた。
誠は、視線を上げた。
「珍しいな」と誠は言った。
「うん」と真弓は答えた。
真弓は、誠の机の向かいに、座らなかった。
立ったまま、誠の机を、見下ろしていた。
誠の机の上には、ノートが、開かれていた。
真弓は、ノートに書かれている文字を、ふと、見た。
誠は、慌てて、ノートを閉じようとした。
でも、間に合わなかった。
真弓は、ノートに書かれている、ある一行を、見てしまった。
「真弓は、感情で判断する人間だから、合理的な対話が、難しい」
真弓は、その一行を、見た。
見た瞬間、真弓の中で、何かが、爆発するように、湧き上がった。
湧き上がったものは、悲しみではなかった。
怒りだった。
真弓が、自分の中で、怒りという感情を、はっきりと認識したのは、これが、初めてだった。
真弓は、これまで、怒りを、表に出さずに生きてきた。怒りを、悲しみや、諦めに、翻訳して処理してきた。
でも、その日、真弓は、翻訳を、やめた。
怒りを、怒りのまま、誠に、ぶつけた。
真弓の声は、震えていた。
でも、引き返さなかった。
真弓は、これまで、感情を、誠の前で、出すことを、避けてきた。誠が、感情を嫌うから、真弓は、自分の感情を、隠してきた。隠して、合わせてきた。
でも、その日、真弓は、隠すのを、やめた。
隠している自分を、見るのが、もう、嫌だった。
真弓は、誠の机に、両手をついた。
誠は、真弓の手を、見た。
真弓の指先は、白くなっていた。それくらい、強く、机を、押さえていた。
誠は、その手を見て、ある分析を、しようとした。
分析しようとした瞬間、真弓が、口を開いた。
真弓は、机から、両手を離した。
離した手は、震えていた。
でも、その震えは、第3話の夜の震えとは、違うものだった。
第3話の震えは、自分が傷ついたことの、震えだった。
第9話の震えは、怒りの震えだった。
真弓は、自分が、誠に、本気で怒っていることを、自分でも、確認した。
確認して、真弓は、口を開いた。
「もう、いい」
真弓は、そう言った。
「私は、ずっと、あなたが、いつか、変わってくれるかもしれないって、思ってた」
「変わってほしいって、言ったことは、ない。一度も。でも、心のどこかで、期待してた」
「あなたが、私を、観察対象としてじゃなく、ただの、私として、見てくれる日が、来るかもしれないって」
「でも、そんな日は、来ないんだね」
「あなたは、これからも、私を、観察し続ける」
「私が、感情で判断する人間だってことを、ノートに記録し続ける」
「それが、あなたの、私への、関わり方なんだね」
「分かった」
「もう、いい」
真弓は、その言葉を、淡々と、誠に、伝えた。
淡々と話したのは、もう、感情を、ぶつけ終わったからだった。
怒りは、出した。出したことで、楽になった。
楽になったあとの真弓は、もう、誠と、対話することを、諦めていた。
「じゃあ、もう、私のこと、観察しなくていいから」と真弓は付け加えた。
「あなたのノートから、私のこと、消してほしい」
「それが、最後の、お願い」
真弓は、そう言って、誠の机の前から、離れた。
離れる前に、真弓は、誠の顔を、もう一度、見た。
誠の顔は、青ざめていた。
真弓は、初めて、誠が青ざめている顔を、見た。
でも、もう、それを、解釈する気は、なかった。
解釈すれば、また、期待が、生まれる。
期待は、もう、生まれてはいけないものだった。
真弓は、振り返らずに、教室を、出た。
失望値、9。
でも、その9は、もう、悲しみだけではなかった。
その9には、真弓の、解放が、混じっていた。
解放されたのは、誠への、最後の期待からの、解放だった。
誠が、真弓のページを、開いている。
ペンを持っているが、何も、書けずにいる。
その夜、誠は、自分の部屋で、ノートを開いていた。
真弓のページを、開いていた。
真弓のページには、これまで、誠が、観察した結果が、たくさん、書かれていた。
「真弓は、感情で判断する」
「真弓は、論理よりも、感情を、優先する」
「真弓は、合理的な対話が、苦手だ」
「真弓の発言は、しばしば、感情に支配されている」
誠は、それらの記述を、しばらく、見ていた。
見ていて、誠は、初めて、ある違和感を、覚えた。
これらの記述は、すべて、真弓を「ある特定の性格を持った人間」として、描いていた。
でも、人は、性格だけで、できているわけではない。
誰でも、状況によって、感情で判断するときも、論理で判断するときも、ある。
真弓も、たぶん、そうだった。
真弓が、感情で判断していた場面は、確かに、あった。でも、論理で判断していた場面も、あった。
誠は、それらを、両方、観察していた。
でも、誠が、ノートに記録したのは、感情で判断した場面だけだった。
論理で判断した場面は、ノートには、書かれていなかった。
誠は、その偏りに、気づいた。
気づいてから、誠は、自分に問いかけた。
なぜ、自分は、真弓の「感情で判断する場面」だけを、記録してきたのか。
その問いに、誠は、答えを、持っていなかった。
持っていなかったが、考えた末に、ある仮説に、辿り着いた。
「俺は、真弓を、感情で判断する人間として、描きたかったのかもしれない」
誠は、その仮説を、ノートに、書こうとした。
書こうとして、ペンが、止まった。
書いたら、確定する。確定すると、まずい。
誠の中で、第6話から続く、「まずい」の感覚が、その夜、最も強く、立ち上がった。
誠は、ペンを、置いた。
そして、自分のノートを、見つめた。
真弓は、最後に「私のこと、ノートから消してほしい」と言っていた。
消そうと思えば、消せた。
新しいノートに、真弓のページなしで、書き始めればよかった。
でも、誠は、消さなかった。
消したら、自分の中の、何かも、一緒に、消えてしまうような気が、した。
消えてしまったら、もう、戻らない。
戻らないことが、誠には、怖かった。
怖い、という感情を、誠が、自分で認識したのは、これが、初めてだった。
誠は、その感情を、しばらく、抱えていた。
抱えていると、目から、涙が、出てきた。
誠は、自分が、泣いていることに、しばらく、気づかなかった。
気づいてから、誠は、自分の頬を、触った。
頬は、濡れていた。
涙は、確かに、出ていた。
誠は、最後に、自分が泣いたのが、いつだったか、思い出せなかった。
子どものころ以来、泣いた記憶が、なかった。
大人になってから、初めて、誠は、泣いていた。
泣きながら、誠は、ノートを、抱えた。
ノートを、捨てなかった。
真弓のページを、消さなかった。
残した。
残したまま、誠は、その夜、深く、眠れなかった。
誠の傷の蓄積、4件目。
でも、その4件目は、これまでの3件とは、違っていた。
これまでの3件は、誠が、自分の傷だと、認識していなかった傷だった。
4件目は、誠が、初めて、自分の傷だと、認識した傷だった。
認識したことで、傷は、ずっと、深く、誠の中に、残ることになった。
誠が、夜のあいだ、考え続けていたあいだ、真弓も、自分の部屋で、ベッドに横になっていた。
でも、真弓は、誠のことを、考えていなかった。
真弓は、自分のことを、考えていた。
「私、今日、怒った」
「初めて、ちゃんと、怒った」
「怒ることは、悪いことじゃなかった」
「怒りを、出したら、楽になった」
真弓は、自分の中の、新しい発見を、整理していた。
怒りという感情を、これまで、真弓は、悪いものとして、扱ってきた。怒ることは、人を傷つけることだと、思っていた。だから、怒らないように、生きてきた。
でも、その日、真弓は、怒った。
怒って、誠を、たぶん、傷つけた。
傷つけたかもしれないけど、それは、それで、よかった。
傷つけたことを、後悔していなかった。
後悔していないことを、真弓は、自分で、確認した。
確認して、真弓は、自分が、変わったことを、感じた。
これまでの真弓は、誰かを傷つけることを、何よりも、恐れてきた。
でも、その日の真弓は、誰かを傷つけても、自分を守ることを、選べた。
これは、成長だった。
でも、悲しい成長でもあった。
真弓は、その夜、その悲しい成長を、自分の中に、迎え入れた。
迎え入れたあとで、真弓は、ようやく、深く、眠った。
第3話以来、真弓が、深く眠れたのは、これが、初めてだった。
反芻は、その夜、止まった。
怒りを、出したことで、止まった。
でも、止まったのは、真弓のほうだけだった。
誠の中では、その夜から、新しい反芻が、始まっていた。
真弓のページを、見つめながら、誠は、第4話で真弓が経験したことを、本格的に、自分のものとして、経験し始めていた。
相手の行動の原因を考えるとき、誠は、相手の「性格」に、それを帰属させていた。「真弓は、感情で判断する人間だ。だから、対話が難しい」。これは、原因と結果を、相手の性格に、紐づけて掛け算する、という構造だった。
でも、この計算式には、決定的な、抜けがあった。自分の性格が、計算式の中に、入っていなかった。
対話が難しいのは、本当に、相手の性格だけが原因なのか。自分の性格は、関係ないのか。誠は、自分の性格を、計算式の外に、置いていた。
相手の行動は、相手の「性格」のせい。自分の行動は、自分の「状況」のせい。
この、不公平な計算式を、誠は、無意識に、使っていた。
相手の行動を、性格に紐づければ、相手は変わらない。変わらない相手のせいで、対話が難しい。だから、自分は、悪くない。自分の行動を、状況に紐づければ、自分は、その時々の状況に、合理的に対応しているだけ。だから、自分は、悪くない。
どちらの場合も、自分は、悪くない。自分が、悪くないということは、自分は、変わらなくていいということ。変わらなくていいということは、自分の構造を、守れるということ。
誠は、この計算式で、自分の構造を、守ってきた。守った代わりに、真弓を、失った。
失ってから、誠は、初めて、計算式の歪みに、気づいた。気づいたが、もう、遅かった。
真弓は、計算式の外に、出ていった。出ていった真弓を、誠は、追いかけられなかった。追いかける方法を、誠は、知らなかった。
知らないまま、誠は、ノートのなかに、真弓のページを、抱え続けた。抱え続けることが、唯一、誠にできる、真弓への、応答だった。
その応答は、真弓には、届かなかった。届かなかったが、誠の中では、確かに、存在し続けた。
存在し続けたものは、十八年後、誠の中で、別のかたちで、立ち上がる。その立ち上がりが、誠の人生を、もう一度、動かすことになる。でも、それは、ずっと先の話だった。
誠は、その朝、長いあいだ、校門の前に立っていた。
真弓の「あなたは、あなたで、生きていけばいい。私は、私で、生きていく」という言葉が、頭の中で、再生されていた。
これは、別れの言葉だった。
誠の脳内では、その認識が、即座に、確定した。
確定したが、誠は、それを、受け入れられなかった。
誠の脳の中には、「別れる」という結論を、受け入れる準備が、できていなかった。
誠は、これまで、人と「別れる」という経験を、ほとんどしていなかった。
誠の人生では、人との関係は、「ある」か「ない」かの、二択だった。
「ある」関係が、「ない」関係に、移行する、という途中過程を、誠は、経験したことがなかった。
でも、真弓との関係は、まさに、その途中過程に、入っていた。
「ある」だったものが、「ない」になりつつあった。
その移行を、誠は、止めることが、できなかった。
止め方を、知らなかった。
誠は、その日、初めて、「自分には、知らないことがたくさんある」という事実を、強く、認識した。
これまでの誠は、知らないことを、調べて、知っていく、というプロセスを、自然に、行ってきた。
でも、人と人の関係について、誠は、調べる相手が、いなかった。
本にも、書いていなかった。
真弓に、聞けば、教えてくれたかもしれない。
でも、真弓は、もう、答える気が、なかった。
真弓に聞けない以上、誠は、自分で、考えるしかなかった。
でも、考える方法を、誠は、知らなかった。
知らないまま、誠は、校門の前に立ち続けていた。
朝の冷たい風が、誠の頬を、撫でていた。
誠は、その風が、いつもより、冷たく感じることに、気づいた。
気づいてから、誠は、自分の身体が、震えていることに、気づいた。
震えている理由を、誠は、考えなかった。
考えると、その震えの正体が、見えてしまうような、気がした。
誠は、目を、閉じた。
閉じても、頭の中では、真弓の最後の言葉が、再生され続けていた。
「あなたは、あなたで、生きていけばいい」
「私は、私で、生きていく」
「じゃあ、また」
真弓の「じゃあ、また」は、本当の「また」では、なかった。
でも、誠は、その「じゃあ、また」を、本当の「また」だと、自分に、思い込ませることにした。
思い込まないと、その朝の冷たさが、もっと、深く、誠を、刺すような、気がした。
これも、自分への嘘だった。
誠は、また、嘘の上に、嘘を、重ねた。
真弓は、その朝、校舎に入ってから、誠のことを、考えなかった。
重ねた嘘の中で、誠は、その日、教室に、入った。
入ってから、誠は、ノートを開いた。
そして、真弓のページに、新しい一行を、書いた。
「真弓は、もう、観察対象から、外れた」
書いて、誠は、ノートを、閉じた。
外れた、と書いたが、誠の中では、外れていなかった。
外れていないことを、誠は、自分で、知っていた。
知っていたが、書いた言葉のほうを、信じることにした。
これも、自分への嘘だった。
誠は、もう、何度目かの、自分への嘘を、ついていた。
嘘のレイヤーは、誠の中で、どんどん、厚くなっていた。
厚くなったレイヤーは、十八年、剥がされないことになる。
剥がす日が、来るとしたら、それは、ずっと先のことだった。
廊下ですれ違っても、軽く、頭を下げるだけ。
二人の距離は、もう、戻らない場所にある。
三学期に入って、誠と真弓は、ほとんど、話さなくなっていた。
挨拶は、していた。すれ違うときに、軽く、頭を下げる。
でも、それ以上のことは、していなかった。
真弓は、自分のグループの中で、いつも通り、笑っていた。
誠は、自分の席で、いつも通り、ノートを広げていた。
二人は、もう、別々の世界に、いた。
同じ学校という、同じ建物の中にいながら、二人は、別々の世界に、いた。
その「別々の世界」は、卒業まで、続くことになる。
続くだけではなく、卒業のあとも、続くことになる。
続く期間は、十八年、だった。
十八年のあいだ、二人は、それぞれの世界の中で、それぞれに、生きていく。
真弓は、自分の感情を、誰にも見せずに、自分の中で、抱え続ける。
誠は、自分の感情を、自分にも見せずに、ノートの中に、閉じ込め続ける。
二つの抱え方は、まったく違っていた。
でも、どちらも、誰にも、届かなかった。
届かなかったまま、二人は、別々に、年を取っていく。
年を取りながら、二人は、ふと、思い出すことがある。
あの日の放課後の教室。
真弓の怒り。
誠の沈黙。
「そういう性格だからだ」という、誠の一言。
「あなたは、あなたで、生きていけばいい」という、真弓の一言。
二人とも、その日のことを、忘れない。
忘れられないことが、二人の関係の、最も、本質的な姿だった。
関係は、終わっていた。
でも、終わった関係は、消えなかった。
消えないまま、二人の中に、残った。
残ったものを、誠は、十八年後、ノートに書き直すことになる。
書き直したノートを、桐生に渡すことになる。
真弓は、自分の手紙を、引き出しの奥に、しまい続けることになる。
しまい続けた手紙は、十八年後も、そこに、残っている。
残っていることを、誠は、知らない。
真弓も、誰にも、それを、言わない。
これが、二人の、争った日の、結末だった。
争うことについて、もう少し、書いておく。
争いは、悪いものではない。
争うことで、人は、自分が、本当に守りたかったものを、知る。
真弓が、その日、誠に、ぶつけた怒りは、真弓の、自分への誠実さの、証だった。
誠が、その日、真弓に向けた言葉は、誠の、自分の構造を守るための、必死の防衛だった。
どちらも、悪くなかった。
どちらも、自分を守ろうとしていた。
でも、自分を守るために、お互いを、傷つけ合った。
傷つけ合うことを、避けるためには、争わないことが、必要だ。
でも、争わないことは、自分を守らないことを、意味する場合がある。
自分を守るためには、争うしかない場面がある。
その場面で、何を選ぶか。
自分を守るために、争うのか。
関係を守るために、自分を譲るのか。
真弓は、自分を、選んだ。
誠は、自分の構造を、選んだ。
二人とも、自分を、選んだ。
選んだ結果、関係は、終わった。
でも、二人とも、自分を、失わなかった。
これは、敗北ではなかった。
これは、二人が、それぞれ、自分の人生を、生きていくための、避けられない通過点だった。
あなたが、もし今、誰かと、争っているなら、その争いを、悪いものとして、責めなくていい。
争いは、あなたが、何かを、守ろうとしている、証だ。
守りたいものが、何なのか、争いの中で、見えてくる。
見えてきたものを、見た上で、それを、守るのか、手放すのかを、選ぶ。
選んだ結果が、関係の継続でも、終わりでも、それは、あなたの、誠実な選択だ。
真弓は、その日、自分の感情の輪郭を、知った。
誠は、その日、自分の構造の限界を、薄く、感じ始めた。
二人とも、争うことで、何かを、得ていた。
得たものを、引き換えに、関係を、失った。
関係と引き換えにしても、得るに値するものが、ある。
それは、自分自身、というものだ。
あなたには、自分自身を、関係よりも、大切にしてほしい。
これが、真弓から、十八年後のあなたへの、六つ目のメッセージだ。
この記事では、以下の概念を参考にした。
- ・損失回避 (Loss Aversion)
- ・根本的帰属の誤り (Fundamental Attribution Error)


