第3章 期待 —— 合意していない未来に、裏切られる — Portrait of Identity

期待

EXPECTATION
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六月の午後。教室。模試の結果が返却された日。机に返却用紙が伏せられている。真弓の手が、その用紙の端を、つまんでいる。
六月の午後。教室。模試の結果が返却された日。
机に返却用紙が伏せられている。
真弓の手が、その用紙の端を、つまんでいる。

合意していない約束に、人は裏切られる。

誰も、明確に「こうしよう」とは言っていない。書面もない。口約束もない。それなのに、約束は存在していて、しかもその約束は、片方だけが知っていることが多い。

知らないほうは、約束を破った覚えがない。知っていたほうは、約束を破られたと感じる。両者は、同じ出来事について、まったく違う記憶を持つことになる。

これが「期待」だ。

期待とは、片方の頭の中だけに存在する未来のことだ。もう片方は、そんな未来があることを、知らない。知らないのに、なぜか、約束を破ったと責められる。

世界中の関係が、これでこじれている。恋人同士、親子、友達、職場、すべてが「期待」と「合意」を取り違えて、傷つけ合っている。

真弓と誠も、その例外ではなかった。

そして、二人の最初の決定的なすれ違いは、ある一枚の紙から始まった。

その紙は、模試の結果用紙だった。

· · ·

六月の上旬、模試の結果が返却された。

真弓は、結果を見ながら、ため息をついた。数学が、思ったよりも悪かった。志望校の合格判定は、Cだった。AでもBでもない、Cだった。

真弓は、その用紙を、机の上に伏せて置いた。何度も見たくなかった。

放課後、隣のクラスの誠のところに行った。誠は、いつも通り、窓際の席で、ノートに何かを書いていた。返却された模試の用紙は、誠の机の上に、見えやすいように広げられていた。

真弓は、誠の用紙を、ちらりと見た。

見ようと思って見たわけではなかった。視界に入っただけだった。

でも、見てしまった。

誠の判定は、Aだった。すべての科目が、A。総合判定もA。志望校は、真弓と同じだった。

真弓は、誠の机の前に立って、しばらく黙っていた。

誠は、視線を上げて、真弓を見た。

Scene 01
放課後の教室 / 模試の結果が返却された日
誠
どうした。
真弓
真弓
模試、どうだった?
誠
誠は、自分の用紙を、真弓のほうに少しだけ向けた。
真弓
真弓
……A判定なんだ。
誠
そうだ。
真弓
真弓
私、Cだった。
誠
そうか。
真弓
真弓
どうしたら、上がるかな。
誠
志望校を変えればいい。
真弓
真弓
真弓は、その瞬間、息を止めた。
真弓
真弓
……今、なんて言った?
誠
志望校を変えればいい。今のお前の点数だと、合格率は二十パーセントを切る。下げて確実に受かる学校を選ぶほうが、合理的だ。
真弓
真弓
合理的って、何。
誠
確率の話だ。受かる確率が高いほうを選ぶ。それが、合理的ということだ。
真弓
真弓
私の将来のこと、そんなふうに決めないでよ。
誠
決めてはいない。事実を言っただけだ。
真弓
真弓
事実が、人を傷つけることもあるんだよ。
誠
誠は、ペンを置いた。少しのあいだ、何も言わなかった。

真弓は、誠の机の前を離れて、自分の席に戻った。

戻りながら、なぜか涙が出そうになった。

涙が出そうになる理由を、真弓は、自分でうまく説明できなかった。

誠の言葉は、間違っていなかった。データを見れば、真弓の合格率は低い。志望校を下げるのが合理的だ。それは、本当のことだった。

でも、真弓が誠に言ってほしかったのは、そういう言葉ではなかった。

「一緒に、頑張ろう」

「まだ時間はある」

「お前なら、受かる」

そういう言葉を、誠が言ってくれると、真弓は、心のどこかで、期待していた。

誠は、頭がいい。誠は、いつも自分のそばにいる。誠は、自分のことを、たぶん、大切に思ってくれている。だから、自分が落ち込んでいるときには、励ましてくれる。

これが、真弓の頭の中にあった「期待」だった。

誰とも合意していない期待だった。

誠も、知らない期待だった。

真弓は、その期待が、誠の言葉によって、粉々に砕けたと感じた。砕けたのは、誠が壊したからではなかった。砕けたのは、その期待が、最初から、片方の頭の中にしか存在していなかったからだった。

でも、真弓は、その仕組みを、まだ知らなかった。

真弓は、誠が自分を傷つけた、と感じた。

失望値、3。最初の決定的失望が、ここで起きた。

誠は、真弓が席を立つのを、視界の端で確認した。それから、ノートのページを、次に開いた。

夜。真弓の部屋。机の上に、模試の結果用紙とペン。真弓は、ペンを持っているが、何も書いていない。窓の外で、雨の音がしている。
夜。真弓の部屋。机の上に、模試の結果用紙とペン。
真弓は、ペンを持っているが、何も書いていない。
窓の外で、雨の音がしている。

その夜、真弓は、自分の部屋で、進路調査票を前にしていた。

調査票には、第一志望、第二志望、第三志望を書く欄があった。

真弓は、第一志望の欄に、最初は、これまで通りの志望校を書こうとした。書こうとして、手が止まった。

誠の言葉が、頭の中で、繰り返し再生されていた。

「合格率は二十パーセントを切る」

「下げて確実に受かる学校を選ぶほうが、合理的だ」

真弓は、ペンを置いた。窓の外を見た。雨が降り始めていた。

真弓は、自分の手元を見た。爪が、いつもより短く切られていた。なぜか、爪を短く切ったあとは、勉強がはかどると思っていた。子供のころからの、些細なジンクスだった。

でも、今夜は、爪が短くなっても、何もはかどらなかった。

真弓は、もう一度、ペンを持った。

そして、第一志望の欄に、別の学校の名前を書いた。

誠が「合理的」と言うほうの、ランクの低い学校だった。

書きながら、真弓は、自分でも気づかないうちに、思っていた。

――誠が、そう言ったから。

誠が放った「合理的」という言葉が、真弓の中で、アンカーになっていた。最初に投げ込まれた数字や条件は、その後の判断のすべてを、引っ張り続ける。真弓は、自分の意思で志望校を決めたつもりだった。でも、決めた基準は、誠の言葉だった。

真弓が、自分の判断を、自分でしているように見えて、実は、誠が放ったアンカーに、未来を繋がれていた。

その仕組みを、真弓は、まだ知らなかった。

真弓は、書き終わった調査票を、机の引き出しに入れた。明日、学校に提出する。

提出すれば、もう、戻れない。

戻れないことは、真弓も、分かっていた。

· · ·

同じ夜、誠は、自分の部屋で、ノートを開いていた。

放課後の、真弓とのやり取りを、誠は、思い返していた。思い返しているという自覚は、あまりなかった。ただ、ペンを動かしていると、自然と、その場面が頭に浮かんできた。

誠は、ノートに、こう書いた。

「事実を言うことが、なぜ、相手を傷つけるのか」

書いてから、誠は、しばらく、その一行を見ていた。

誠の中では、事実は、客観的に観察可能なデータだった。データには、感情はない。だから、データを伝えることで、誰かを傷つけることは、論理的にはあり得ない。

でも、放課後、真弓は、明らかに傷ついていた。

傷ついた、という事実は、誠の脳内データベースに、新しい項目として記録された。「真弓は、合格率という事実を伝えられたとき、傷ついた」。これが、観察結果だった。

誠は、この観察結果を、どのフォルダに振り分けるべきか、迷った。

「めんどくさいタイプの女子の発言」のフォルダには、入らなかった。なぜなら、これは発言ではなく、反応だったからだ。

「例外データ」のフォルダにも、入りきらなかった。例外データは、これで三件目だった。三件目になった例外データは、もう例外ではなかった。

誠は、新しいフォルダを作るかどうか、迷った。

迷った末に、誠は、新しいフォルダを作らなかった。代わりに、その観察結果を、ノートのその一行の下に、放置した。

「事実を言うことが、なぜ、相手を傷つけるのか」

その問いに、誠は、答えを書かなかった。書けなかった。

誠は、ノートを閉じた。

閉じたあとで、誠は、ふと、思った。

明日、真弓に会ったら、何を言うべきだろうか。

「言うべきこと」を、誠が考えるのは、久しぶりのことだった。普段の誠は、「言うべきこと」ではなく、「言えること」しか考えない。事実があれば、事実を言う。それで終わりだった。

でも、明日、真弓に会ったとき、事実を言うことが、また真弓を傷つけるかもしれない。

誠は、考え込んだ。

考え込んだまま、答えは出なかった。

誠は、ペンを置いて、電気を消した。

その夜、誠は、いつもより、寝つきが悪かった。寝つきが悪い、という現象も、誠にとっては、新しいデータだった。

Scene 02
翌日の教室 / 朝
真弓
真弓
おはよう。
誠
おはよう。
真弓
真弓
昨日の話、考えた?
誠
考えた。
真弓
真弓
何か、思った?
誠
誠は、少しのあいだ、机の上のノートを見ていた。
誠
事実を言うことが、お前を傷つけたなら、それは俺の言い方が悪かったのかもしれない。
真弓
真弓
……言い方の問題、じゃないよ。
誠
じゃあ、何の問題だ。
真弓
真弓
私が、あなたに、何を言ってほしかったかの問題。
誠
何を、言ってほしかったんだ。
真弓
真弓
「一緒に、頑張ろう」って。
誠
それを言われたら、合格率は上がるのか。
真弓
真弓
……上がらないけど。
誠
じゃあ、なぜ、それを言ってほしかった。
真弓
真弓
真弓は、誠の顔を、しばらく見ていた。
真弓
真弓
……あなたって、本当に、分からない人なんだね。
誠
何が分からないんだ。
真弓
真弓
いいよ、もう。私が悪かった。期待した私が、悪かった。

真弓は、自分の席に戻った。

戻りながら、真弓は、心の中で、ある言葉を、何度か繰り返していた。

――期待した私が、悪かった。

その言葉を、自分に向かって繰り返すたびに、真弓の中で、何かが、少しずつ、固くなっていった。

誠に、もう、何も期待しない。

誠に、励ましを求めない。

誠に、優しさを求めない。

真弓は、そう決めた。

決めたわけではなかった。決めようとしているわけでもなかった。ただ、自然と、そうなっていた。期待をしないことは、傷つかないことだった。傷つかないことは、楽だった。

でも、楽になることと引き換えに、真弓は、誠との何かを、一つ、失った。失ったものが何だったのかは、真弓自身も、その時点では、分かっていなかった。

分かるのは、ずっと後のことだった。

· · ·

同じ朝、誠も、自分の中で、何かを失っていた。

誠は、真弓が「期待した私が、悪かった」と言って席に戻ったあと、自分のノートを開いた。

昨日書いた一行の下に、新しい一行を書こうとした。書こうとして、手が止まった。

書くべき言葉が、見つからなかった。

誠は、これまで、ノートに書く言葉に困ったことがなかった。誠のノートは、いつも、観察した事実と、それに対する分析で埋まっていた。事実があれば、分析できた。分析できれば、言葉になった。

でも、今、誠は、書くべき言葉を見つけられなかった。

事実は、観察できていた。「真弓が、自分に何かを期待していた。その期待は、合理的な事実によって、裏切られた。真弓は、傷ついた」。これが、観察結果だった。

でも、その観察結果に対して、誠は、分析を加えることができなかった。

なぜ、真弓が、自分に「励まし」を期待していたのか。

なぜ、自分が、それを「言える人間」だと、真弓が思っていたのか。

その「期待」は、いつ、どこで、誰の合意のもとに、形成されたのか。

誠には、すべてが、不明だった。

不明なものを、誠は、ノートに書けなかった。

誠は、ノートを閉じた。

閉じたとき、誠は、初めて、自分のノートに「書けない何か」があることに、気づいた。

気づいたが、その意味については、まだ、深く考えなかった。

誠は、傷ついた、と認識しなかった。

でも、誠の中で、その朝、何かが、確かに、削れた。削れた何かは、目には見えなかった。痛みもなかった。ただ、削れた、という感触だけが、誠の中に、薄く、残った。

その感触の正体を、誠が言語化するのは、ずっとあとになってからだった。

昼休みの教室。真弓は、いつものグループの女子たちと弁当を食べている。誠は、自分の席で一人、ノートを広げている。二人の机のあいだに、いつもより、少しだけ広い距離がある。
昼休みの教室。真弓は、いつものグループの女子たちと弁当を食べている。
誠は、自分の席で一人、ノートを広げている。
二人の机のあいだに、いつもより、少しだけ広い距離がある。

その日の昼休み、真弓は、いつものグループと弁当を食べていた。

笑っていた。普段通りに、笑っていた。

でも、笑いながら、真弓は、ふと、誠のクラスの方を見た。誠は、自分の席で、一人で弁当を食べていた。

真弓は、視線を戻した。

戻したあとで、真弓は、ある事実に気づいた。

誠の机を、自分が見たのは、昨日まで、何かを話しに行くためだった。今日、見たのは、何かを話しに行くためではなかった。ただ、見ただけだった。見て、戻った。

その違いを、真弓は、自分の中で、はっきりと感じた。

そして、思った。

――もう、誠のところには、行かないかもしれない。

その思いは、決意ではなかった。決断でもなかった。ただ、自然な、手放しだった。

真弓は、隣の席の子の冗談に、また、笑った。

笑いながら、真弓の中で、誠の存在が、少しだけ、遠くなった。

その「少しだけの遠さ」が、十八年後の二人の距離の、最初の一歩だった。

誠の計算式 — 掛け算(×)
最初の数字(変数)× その後の判断 = 未来
…拡張するはずが、分岐する。
掛け算は、本来、関係を拡張する演算だ。一つの要素に、別の要素を掛けることで、結果が広がる。可能性が広がる。未来が広がる。

でも、最初に掛ける数字が「アンカー」になっていると、掛け算は、拡張ではなく、分岐になる。最初の数字が大きければ、結果も大きい。最初の数字が小さければ、結果も小さい。最初の数字に、後のすべての判断が、引っ張られる。

誠が真弓に言った「合格率二十パーセント」は、真弓の未来に投げ込まれたアンカーだった。真弓は、そのアンカーを基準にして、自分の未来を計算した。計算した結果、真弓は志望校を下げた。下げた選択は、真弓自身のものに見えた。でも実際は、誠が放った数字に、未来を繋がれていた。

二人は、この日、最初の決定的な分岐を経験した。同じ模試の結果用紙を見ながら、二人の未来が、別々の方向に掛け算され始めた。

分岐したことに、誠は気づかなかった。分岐したことに、真弓は気づいた。気づいたほうが、傷を負う。気づかないほうは、傷を負わない。それは、必ずしも、気づいたほうが弱いということではない。気づいたほうが、敏感だっただけだ。

敏感な側が、いつも、最初に削られる。
Scene 03
数日後の放課後 / 廊下
誠
最近、来ないな。
真弓
真弓
何が?
誠
俺のところに。
真弓
真弓
用事がないから。
誠
用事がなくても、来てたじゃないか。
真弓
真弓
……来てた、ね。
誠
なぜ、来なくなった。
真弓
真弓
期待しないことに、決めたから。
誠
何を、期待していたんだ。
真弓
真弓
それを聞かれてる時点で、もう、答える意味がないんだよ。
誠
誠は、廊下に立ち止まった。真弓は、振り返らずに、歩いていった。

誠は、真弓の背中を見送りながら、しばらく、廊下に立っていた。

「それを聞かれてる時点で、もう、答える意味がないんだよ」

真弓のその言葉が、誠の中で、再生され続けていた。

意味が、分からなかった。

誠は、これまで、分からないことに対して、必ず分析を試みていた。分からないものは、調べる。調べれば、分かる。分かれば、ノートに書ける。これが、誠のやり方だった。

でも、今回、誠は、「分からない」ことに対して、調べる気が起きなかった。

調べたら、何か、嫌なことが分かるような気がした。

嫌なこと、という感覚そのものが、誠にとっては、新しいデータだった。誠の脳は、これまで、感情と事実を分けて処理していた。事実を調べることに、感情が介入したことは、なかった。

でも、今、誠は、調べたくなかった。

誠は、その感覚を、無視することにした。

無視するという選択は、誠にとっても、初めての選択だった。

初めての選択をしたことに、誠は、気づいていなかった。

誠は、自分のクラスに戻り、いつも通り、ノートを開いた。

ノートには、もう、新しい言葉は書かなかった。書く気が、起きなかった。書く気が起きないという感覚も、誠にとっては、新しいデータだった。

新しいデータが、その日、三つ、誠の中に蓄積された。

三つのデータは、どこのフォルダにも、振り分けられなかった。

振り分けられなかったまま、放置された。

放置されたものは、後年、まとめて、別のフォルダに振り分けられることになる。そのフォルダの名前を、誠は、十八年後に、つけることになる。

「真弓と、共有できなかったもの」

そのフォルダには、最終的に、三十七件のデータが、収められることになる。

· · ·

期待は、片方の頭の中だけに存在する未来だ、と冒頭で書いた。

真弓は、誠に「励まし」を期待していた。誠は、その期待があることを、知らなかった。だから、真弓は、誠が約束を破ったと感じ、誠は、何も知らないままだった。

でも、もう一つ、見落としていたことがある。

誠も、真弓に、ある期待を抱いていた。

「事実を、事実として受け取ってほしい」

これが、誠の期待だった。誠は、それを期待だと思っていなかった。当たり前のことだと思っていた。当たり前のことは、誠の中では、期待ではなく、前提だった。

でも、真弓にとって、それは前提ではなかった。事実は、事実として受け取れないことがある。感情を伴うときは、特に。

誠の前提は、真弓には、共有されていなかった。

つまり、誠も、真弓に、合意していない期待をしていた。

そして、その期待は、真弓によって、無自覚に裏切られていた。

裏切られたことに、誠は、気づかなかった。

気づかないことが、誠にとっての痛みだった。痛みが見えないかたちで、誠の中に、ゆっくりと、蓄積していた。

· · ·

あなたは、誰かに、合意していない期待をしていないだろうか。

「これくらい、言わなくても分かってくれるはず」

「これくらい、頼まなくてもやってくれるはず」

「これくらい、説明しなくても伝わるはず」

これらの期待は、すべて、片方の頭の中だけに存在している。もう片方は、その期待があることを、知らない。

そして、期待が裏切られたとき、片方は傷つき、もう片方は、何が起きたのか分からないまま、立ち尽くす。

真弓と誠の最初の決定的なすれ違いは、まさにそれだった。

真弓は、傷ついた。誠は、何が起きたのか分からなかった。

分からないまま、二人は、少しずつ、距離を取り始めた。

距離が開いていくことに、二人とも、気づいていた。気づいていながら、二人とも、何も言わなかった。

言葉にすると、何かが、確定してしまうような気がしたからだった。

確定しないまま、十八年が、流れることになる。

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References

この記事では、以下の概念を参考にした。

  • ・アンカリング (Anchoring Effect)
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