1-6|恋愛のバグ|変わる感情を、変わらない前提として扱ってしまう構造

恋愛という文字と、額に手を当てて考え込む男性のシルエットイラスト

目次

1-6-1|恋愛のバグとは(現象の輪郭)

街を歩くカップルの男性が、隣の女性と腕を組みながらも、通りすがりの別の女性に視線を向けてしまい、気持ちが揺れている様子。
恋愛のバグ――関係があるのに、意識が外へ流れてしまうとき。

恋愛のバグ ― 変わるものと変わらないものを混同してしまう状態

「なんで他の人に目移りしちゃうんだろ…」

隣には大切な人がいる。腕を組んで歩いている。関係は悪くない。 なのに、すれ違った誰かに目が行く。一瞬だけ、別の世界を想像してしまう。

そのあとに来るのは、罪悪感。 「自分はダメな人間なんじゃないか」「本当に好きなら、こんなこと思わないはずだ」

しかし、これは人間として自然な反応です。 問題は目移りすることではなく、変わる感情と変わらない関係を同じ天秤に乗せてしまうことにあります。

恋愛のバグとは、変数である感情定数である信頼と混同してしまう状態です。 割り算で、定数と変数を分けます。

では、式から見ていきましょう。


1-6-2|恋愛のバグの状態を割り算の計算式で考えてみる

恋焦がれる気持ちは美しいですが、変数に過ぎません。関係を支えるのは、常に定数である「信頼」だけです。

二人の関係 ÷ 信頼(定数) = 安定 …余り:恋焦がれ(変数)

二人の関係を「信頼」で割ると、「安定」が出ます。

信頼とは何か。 それは、接触回数を重ね、苦楽をともにしたからこそ生まれるものです。

単純接触効果と同じです。時間に比例して信頼は増す。一緒に笑った回数、一緒に乗り越えた困難の数、一緒に沈黙できた時間の長さ。それらが積み重なって、行動に責任や容認が生まれる。

会社に例えるなら、信頼は固定費です。社員を雇うように、維持するためのコストがかかる。しかし、そのコストを払い続けているからこそ、関係が安定する。

信頼が定数であるのは、それなりの実績があるからです。 簡単には動かない。簡単には壊れない。時間をかけて築いたものだから。


1-6-3|恋愛のバグを割り算で割ったときに浮かびあがる「安定」について

安定とは、ドキドキしないことではありません。 信頼という定数の上に立っている状態です。

恋愛のバグが厄介なのは、「安定」を「退屈」と勘違いすることです。

人の「好き」という気持ちには賞味期限があります。脳内の化学反応として、恋愛初期のドーパミンの嵐は、どんなに激しくても数年で収まっていく。これは生物としての仕様です。

その減退を「愛が冷めた」と解釈してしまうのが、恋愛のバグです。 しかし実際には、フェーズが変わっただけです。嵐が去ったあとに残るのが、信頼に基づいた安定です。

安定の中に、新しい発見や小さな喜びを見つけられるかどうか。 それは、関係の質の問題であって、感情の賞味期限の問題ではありません。


1-6-4|恋愛のバグを割り算して余りとして残るものについて

余りとして残るのは「恋焦がれ(変数)」です。

変数とは、移り変わるもの。 他の人に目が行くこと。新しい出会いにときめくこと。隣の芝生が青く見えること。

これ自体は、自然なことです。 主婦が推しメンを持つこと。旦那がグラドルを好きなこと。それは変数として正常な反応です。

問題は、定数を壊してまで変数を取りに行く行為です。

信頼という固定費を払い続けてきた関係を、一時的なときめきという変動費のために捨てる。これは家計簿で言えば、二人で積み立ててきた貯金を崩して、当たるかわからない宝くじに全額突っ込むようなものです。

恋焦がれること自体はバグではありません。 それを定数と混同して、定数を壊す判断をすることがバグです。

余りとして残る恋焦がれは、消す必要がない。 ただ、「これは変数だ」と認識するだけで十分です。

階層がどこで、どこまでを許容し、定数の部分をどう守るか。 その割り切りが、恋愛のバグを静かにします。


1-6-5|恋愛のバグを少し距離を置いて観察してみる

ここまで6つのバグを見てきました。

反芻、期待、承認、嫉妬、孤独、恋愛。 それぞれ形は違いますが、構造は同じです。

割り算で分ければ、行動できる部分と余りに分かれる。 余りは消えない。しかし、余りだと知っているだけで、振り回されなくなる。

ここで一つ、問いかけます。

自分の人生を、生きていますか?

他人の目を気にして、他人の基準で自分を測り、他人の感情に振り回される。 それは、自分の人生ではなく、他人の人生を生きている状態です。

恋愛のバグも同じです。 相手の気持ちばかりを気にして、自分の気持ちが見えなくなっている。

定数と変数を分ける。 自分の感情を、自分の目で見る。

それが、恋愛のバグを俯瞰するということです。


1-6-6|人間の普遍的な悩みを他にも考えてみる【所有のバグ】

恋愛のバグは、人間の脳が持つ「バグ」の一つに過ぎません。

次の記事では「所有のバグ」を取り上げます。 持っているだけで価値があると思い込んでしまう構造──「捨てられない」「手放せない」、あの執着の正体です。

1-7|所有のバグ|持っているだけで価値があると思い込んでしまう構造


1-6-7|その生きづらさ、構造につき。【全体を俯瞰する】

このシリーズ「その生きづらさ、構造につき。」では、全9つのバグを割り算で分解していきます。

すべてのバグに共通しているのは、無意識なら支配され、意識すれば防げるということ。

余りは消えなくていい。 ただ、それが余りだと知っているだけで、十分です。

1-5 1-7

次のステップ

Layer 1 / 全記事 生きづらさの記事一覧 Layer 1 / まとめ このレイヤーを一気に読む Layer 2 / 次のレイヤー 構造的フロネーシスへ
恋愛という文字と、額に手を当てて考え込む男性のシルエットイラスト

この記事が気に入ったら
フォローしてね!

何か気づけはあればシェアをお願いします!
目次