1-8|老いのバグ|変化を「時間の物差し」で評価してしまう構造

老いという文字と、額に手を当てて考え込む男性のシルエットイラスト
目次

1-8-1|老いのバグとは(現象の輪郭)

夕暮れの公園のベンチに座り、街並みを眺めながら「老いてしまった」「あの頃に戻りたい」と過去を振り返って考え込む中年の人物の姿。
老いのバグ――時間の経過ではなく、状態の変化に意識が絡め取られている瞬間。

老いのバグ ― 変化を「時間」で測ることで、今の自分を否定してしまう状態

「気がつけば、こんなに太って、老け込んだ…」 「そういえば、あそこにビルが建ったなぁ」 「あの頃に戻りたい…」

夕暮れの公園。ベンチに座って、街を眺める。 景色が変わっている。自分も変わっている。 その変化を「歳をとった」という言葉でまとめてしまう。

しかし、ここで立ち止まって考えてみてください。

ビルが建ったのは、誰かが行動した結果です。 あなたの身体が変化したのも、生きてきた結果です。

それを「時間が経ったから」と説明するのは、本当に正しいでしょうか。

老いのバグとは、変化を「時間」という概念で測ってしまう状態です。 割り算で、時間と状態を分けます。

では、式から見ていきましょう。


1-8-2|老いのバグの状態を割り算の計算式で考えてみる

時間という物差しを捨てましょう。残るのは、劣化ではなく「今、どういう状態か」という事実だけです。

身体の変化 ÷「今」この瞬間 = 状態 …余り:時間経過という概念

身体の変化を「今この瞬間」で割ると、「状態」が出ます。

これは他のバグとは少し違う割り方です。 判断基準で割るのではなく、時間軸を固定して割っています。

なぜか。

私たちが「老いた」と感じるとき、必ず比較が起きています。 10年前の自分と比べている。20代の自分と比べている。 あるいは、同年代の誰かと比べている。

しかし、その比較の軸になっている「時間」とは何でしょうか。

1秒は、誰かが定義した時間の単位です。 1年は、地球が太陽の周りを一周する物理現象に名前をつけたものです。

これはお金と同じです。共通言語として便利だから使っているだけで、それ自体に実体があるわけではありません。

江戸時代の人は、日が出たら働き、日が暮れたら休んでいました。時計を見て「もう何時だ」と焦ることはなかった。時間の感覚は、予期(これから何が起きるか)と想起(何が起きたか)で構成されている。つまり、時間は「経過するもの」ではなく「認知するもの」です。

「今この瞬間」で割ると、時間経過は消えます。 残るのは、今のあなたの「状態」だけです。


1-8-3|老いのバグを割り算で割ったときに浮かびあがる「状態」について

状態とは、今この瞬間のあなたのことです。

「歳だからもう遅い」「若くないからダメだ」──これらは時間の物差しで自分を測った結果です。

しかし、身体の機能は歳で一律に決まるものではありません。健康寿命は人によって違います。60歳でフルマラソンを走る人もいれば、30歳で身体を壊す人もいる。

「遅い」「早い」は、時間という概念が作り出した幻想です。

あなたの状態は、数字(年齢)では測れません。 今、何ができるか。今、何を感じているか。今、どこに向かおうとしているか。

それが「状態」です。 過去の自分でも、未来の自分でもなく、今この瞬間の自分。

時間軸を外して、状態だけを見たとき、「老い」は消えます。 残るのは、今の自分がどうであるか、という事実だけです。


1-8-4|老いのバグを割り算して余りとして残るものについて

余りとして残るのは「時間経過という概念」です。

時間の感覚は消えません。カレンダーは進む。誕生日は来る。鏡に映る自分は変わっていく。

しかし、それは「変化」であって「劣化」ではありません。

ビルが建ったことを「時間が経った」と表現するのは簡単です。 しかし実際に起きたのは、誰かが設計し、誰かが建て、誰かが入居したという行動の連続です。

あなたの身体が変わったことも同じです。 食べたもの、動いた量、休んだ時間、考えたこと──すべての行動の積み重ねが、今の状態を作っている。

「歳をとった」は、その積み重ねを「時間」という一語で圧縮しているだけです。

余りとして残る時間経過の概念は、消す必要はありません。 ただ、それが概念であることを知っているだけで、老いのバグの支配力は弱まります。


1-8-5|老いのバグを少し距離を置いて観察してみる

8つのバグを見てきました。

反芻、期待、承認、嫉妬、孤独、恋愛、所有、老い。 形は違いますが、すべてに共通する構造があります。

無意識であれば支配される。 意識すれば防げる。

老いのバグは、その中で最も気づきにくいバグです。 なぜなら、「歳をとる」ことは当たり前すぎて、それが概念であることに疑問を持つ人がほとんどいないからです。

自分の人生を、生きていますか?

「あの頃に戻りたい」と思っているとき、あなたは過去の人生を生きています。 「もう歳だから」と思っているとき、あなたは数字の人生を生きています。

今この瞬間の自分を見てください。 それが、あなたの状態です。

過去でも未来でもなく、今。 それだけが、確かなものです。


1-8-6|人間の普遍的な悩みを他にも考えてみる【欲求の先の違和感】

老いのバグは、人間の脳が持つ「バグ」の最後の一つです。

ここまで8つのバグを構造として見てきました。 次の記事では、これらすべてを理解した先に残る「違和感」について考えます。

1-9|欲求をすべて理解した先に、なぜか残る違和感について


1-8-7|その生きづらさ、構造につき。【全体を俯瞰する】

このシリーズ「その生きづらさ、構造につき。」では、全9つのバグを割り算で分解していきます。

すべてのバグに共通しているのは、無意識なら支配され、意識すれば防げるということ。

余りは消えなくていい。 ただ、それが余りだと知っているだけで、十分です。

1-7 1-9

次のステップ

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